桐蔭特許翻訳講座2014年度第2期 ― 2014年08月09日 13:23
今回は、桐蔭特許翻訳講座2014年度第2期のお話です。
この講座は、前期と同様、訳語選択の「なぜ」を考えるというタイトルで開催されます。期間は、9月24日から12月17日まで、隔週水曜日の10:40~12:10となっています。毎回、特許明細書から抜粋した英文(130ワード程度)の課題が出され、講座のある週の月曜日午前10時までに、各自が翻訳した和文を提出する決まりです。それを講師が集計して、訳語選択のバラツキと頻度をまとめます。当日は、その資料をもとに、どうしてその訳語を選択したのかについて、参加者全員で議論し、考え方を共有するという進め方です。一回の講座が終了して数日後、講師から議論した内容や補足事項などを記載したコメントがメールで送信されてきます。
毎回、訳語選択にあたり、内容を充分調べて、納得できる根拠を確認した後、訳文を提出していますが、講座当日には、また新たな考え方、気付きが出てくることに吃驚してしまいます。今度こそ、ほぼ完璧な訳文と思っていても、結果的に内容を充分理解していなかったところや、分かっているという思い込みにより、調査をしないで訳語を決定したところなどが明らかになり、内容の理解度は、自分が考えているほど高いものでは無いことに気付かされます。
受講回数を重ねるにつれて、明細書の記載内容を理解するレベルが少しずつ上がっている、少なくとも、本当はどういう意味かという心の中の問いかけが増えてきているという実感があります。
(桐蔭特許翻訳講座2014年度第2期)
翻訳白書(翻訳業界調査報告書) ― 2014年06月21日 21:34
今回は、翻訳白書(翻訳業界調査報告書)のお話です。
先週、日本翻訳連盟(JTF)が主催した講演会に参加して、資料を入手してきました。そのタイトルは、2013年度翻訳白書(第4回翻訳業界調査報告書)です。(以下の写真をご覧下さい。)今回が5年ぶりのアンケート調査の報告で、従来の翻訳会社に加えて、初めて、個人翻訳者も調査対象になっています。有効回収数は、翻訳会社192社(回収率25%)、個人翻訳者429名(回収率33%)です。
調査報告を聞いて、感じた点をいくつか紹介します。
(1)特許翻訳が占める分野別比率
翻訳会社における分野別売上金額の比率で、特許は8年前の21%から昨年の5%へ急激に低下しています。これは、全体のパイが変わらないとすれば、ソースクライアント自ら手がけたり、特許事務所に翻訳させたりして、翻訳会社への発注が減少しているのかも知れません。一方、比率が増えている分野は、科学・工業技術文書とビジネス文書です。翻訳全体を俯瞰してみると、必ずしも特許翻訳に拘らず、例えば科学・工業技術文書にトライするのも選択肢として考えられます。
(2)個人翻訳者の年齢
40から50代が約2/3を占めていますが、60代以上も12%程おられるので、年齢制約はそれほど大きくないように思いました。
(3)翻訳単価、翻訳速度、翻訳収入
個人翻訳者の翻訳単価は、英日翻訳(原文基準)で、最も多い価格帯が9~11円/ワードですが、3円未満の人が2.2%いたことに吃驚しました。そんな単価では、最低賃金にも届かないと思われます。翻訳速度は、最多レンジが200から300ワード/時間です。今まで聞いた実務者の速度2,000ワード/日と近い数字で納得しました。翻訳収入の最多レンジは、年間300~400万円で、平均は380万円だそうです。翻訳収入に与える因子の影響分析によると、翻訳速度が200ワード/時間以上では、殆ど影響がないが、単価の違いによる影響は、明白で、翻訳収入を増やすには、翻訳単価を上げるのが第一条件になります。翻訳品質を上げて、翻訳会社と単価交渉をするか、ソースクライアントとの直接取引を増やす等の選択肢が考えられます。全体として、個人翻訳者の受注条件は、以前に聞いた話に比べて、厳しくなっているのではないかと感じました。
(翻訳白書)
桐蔭特許翻訳講座2014年度第1期 ― 2014年04月12日 16:42
今回は桐蔭特許翻訳講座2014年度第1期のお話です。
桜の見頃は終わって、今まさに春本番を迎えようとしています。今年も桐蔭横浜大学の生涯学習センターにおいて、各種講座が開講になりますが、2年前から受講している特許翻訳講座についてもご案内があり、受講手続きを済ませました。(以下の写真をご覧下さい。)
昨年度までは、毎週、平日の水曜日に開催されていましたが、今年度から、隔週で水曜と土曜に開催されます。多分、平日に受講できない人のために土曜の開催日が追加されたのでしょう。
今期も、前期に引き続いて、【訳語選択の「なぜ」を考える】と題する講座が開かれます。英文特許明細書の一部を受講者が予め和訳して、訳語選択の考え方やアプローチについて、受講者全員で共有化を図るのが主眼です。いつ参加しても、十人十色の訳文が出てくるのが、面白いところで、中には、自分でも気付かない考え方や発想をされる方もおり、興味は尽きません。
最近は特許翻訳実務から少し距離をおいているため、この講座を受講していることが唯一の楽しみであり、会社勤務の喧噪から離れた息抜きの場にもなっています。特に、受講後に有志が集まるランチ会では、色々な話題で盛り上がっていて、いつも刺激を受けております。
(桐蔭特許翻訳講座2014年度第1期)
「異字同訓」の漢字の使い分け ― 2014年03月23日 15:34
今回は「異字同訓」の漢字の使い分けに関するお話です。
文化庁は、先月、常用漢字表にある漢字で、同じ訓読みでも、字によって意味が異なる「異字同訓」の使い分け例をまとめて発表しました。
全部で133項目の訓を紹介しています。(記載例は以下の写真をご覧下さい。)
例えば、「あう」という訓では、「会う」は「主に人と人が顔を合わせる」、「合う」は「一致する。調和する。互いにする」、「遭う」は「思わぬことや好ましくない出来事に出くわす」と意味を示しています。
英文和訳の特許翻訳をする際に、適切な日本語の訳語を選定するうえで、異字同訓の知識は不可欠であると思います。おかしな日本語の使用を避けるためにも、この資料を一読しておくことを勧めます。
今回の発表内容の中から、気になった使い分け例をいくつか紹介します。
[以下に抜粋した内容を示します。]
【作る】語義:こしらえる。
用例:米を作る。規則を作る。新記録を作る。計画を作る。詩を作る。笑顔を作る。会社を作る。機会を作る。組織を作る。
【造る】語義:大きなものをこしらえる。醸造する。
用例:船を造る。庭園を造る。宅地を造る。道路を造る。数寄屋造りの家。酒を造る。
【創る*】語義:独創性のあるものを生み出す。
用例:新しい文化を創(作)る。画期的な商品を創(作)り出す。
*一般的には「創る」の代わりに「作る」と表記しても差し支えないが、事柄の「独創性」を明確に示したい場合には、「創る」を用いる。
【溶かす・溶く・溶ける】語義:液状にする。固形物などを液体に入れて混ぜる。一体となる。
用例:鉄を溶かす。雪や氷が溶(解)ける*。チョコレートが溶ける。砂糖が水に溶ける。絵の具を溶かす。小麦粉を水で溶く。地域社会に溶け込む。
*「雪や氷がとける」の「とける」については、「雪や氷が液状になる」意で「溶」を当てるが、「固まっていた雪や氷が緩む」と捉えて「解」を当てることもできる。「雪解け」はこのような捉え方で「解」を用いるものである。
[引用ここまで]
今回の異字同訓の使い分け例は、文化庁のホームページ
(http://www.bunka.go.jp/kokugo_nihongo/bunkasingi/pdf/ijidoukun_140221.pdf)で公開されています。
(異字同訓の一例)
桐蔭特許翻訳講座第3期 ― 2014年01月03日 16:52
今回は、桐蔭特許翻訳講座第3期のお話です。
桐蔭横浜大学の生涯学習センターにて開催される特許翻訳講座第3期(1月15日から2月26日)は、第2期に引き続いて「訳語選択の【なぜ】を考える」と題する内容です。課題文を翻訳する際、どうしてその訳語を選択するに至ったのか、受講生が採用した調べ方や訳語選択の考え方を全員で共有するプロセスが特徴です。前回もそうでしたが、今回も自分では気付かない思考プロセスが現れるのを期待して、受講するのを決めました。年度末にからむ大学側の施設利用に制限があるらしく、全6回の講座(前期は10回)となっています。
訳語選択に当たっては、日本語の語彙の微妙な差異を十分に理解していないと、原文の英語に近い訳語を選び出すことが難しくなります。英英辞典で原語の意味範囲を確認すると共に、日本語の辞書でその訳語の意味範囲を調べて、最も適切な言葉を選択する必要があります。原語に無い意味合いを足したり、原語の意味の一部を削ったりすると、訳者の作文と指摘される恐れがあります。
そこで、便利なのが、日本語の類語辞典です。以前から、1冊欲しいと思っていたところでした。たまたま立ち寄った紀伊國屋書店で、そのことを思いだし、辞書コーナーで数種類の類語辞典を手にとって見ました。内容を十分確認した上で、気に入った1冊を購入しました。(以下の写真をご覧下さい。)
出版元の宣伝文句は、以下の通りです。【類書中最多の6万6200項目収録。手紙・メール・報告書・レポート・論文・翻訳…文章を書くときに、俳句・短歌を詠むときに、ぴったりの言葉が簡単に引き出せる、使いやすい決定版類語辞典誕生。】
内容確認に使用したのは、桐蔭特許翻訳講座で話題に上った「水産物」と「海産物」の違い。両者とも魚介類、海藻など、水中もしくは海でとれる有用なものを意味しますが、海産物には加工品が含まれます。この点がしっかり説明されていたので、下記に示す講談社類語辞典を購入しました。
(類語辞典)





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