翻訳白書(翻訳業界調査報告書)2014年06月21日 21:34

今回は、翻訳白書(翻訳業界調査報告書)のお話です。

先週、日本翻訳連盟(JTF)が主催した講演会に参加して、資料を入手してきました。そのタイトルは、2013年度翻訳白書(第4回翻訳業界調査報告書)です。(以下の写真をご覧下さい。)今回が5年ぶりのアンケート調査の報告で、従来の翻訳会社に加えて、初めて、個人翻訳者も調査対象になっています。有効回収数は、翻訳会社192社(回収率25%)、個人翻訳者429名(回収率33%)です。

調査報告を聞いて、感じた点をいくつか紹介します。

(1)特許翻訳が占める分野別比率

翻訳会社における分野別売上金額の比率で、特許は8年前の21%から昨年の5%へ急激に低下しています。これは、全体のパイが変わらないとすれば、ソースクライアント自ら手がけたり、特許事務所に翻訳させたりして、翻訳会社への発注が減少しているのかも知れません。一方、比率が増えている分野は、科学・工業技術文書とビジネス文書です。翻訳全体を俯瞰してみると、必ずしも特許翻訳に拘らず、例えば科学・工業技術文書にトライするのも選択肢として考えられます。

(2)個人翻訳者の年齢

40から50代が約23を占めていますが、60代以上も12%程おられるので、年齢制約はそれほど大きくないように思いました。

(3)翻訳単価、翻訳速度、翻訳収入

個人翻訳者の翻訳単価は、英日翻訳(原文基準)で、最も多い価格帯が911円/ワードですが、3円未満の人が2.2%いたことに吃驚しました。そんな単価では、最低賃金にも届かないと思われます。翻訳速度は、最多レンジが200から300ワード/時間です。今まで聞いた実務者の速度2,000ワード/日と近い数字で納得しました。翻訳収入の最多レンジは、年間300400万円で、平均は380万円だそうです。翻訳収入に与える因子の影響分析によると、翻訳速度が200ワード/時間以上では、殆ど影響がないが、単価の違いによる影響は、明白で、翻訳収入を増やすには、翻訳単価を上げるのが第一条件になります。翻訳品質を上げて、翻訳会社と単価交渉をするか、ソースクライアントとの直接取引を増やす等の選択肢が考えられます。全体として、個人翻訳者の受注条件は、以前に聞いた話に比べて、厳しくなっているのではないかと感じました。

 

 

(翻訳白書)

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